高血圧

高血圧症の基礎知識

はじめに

ここでは、動脈硬化を進める生活習慣病の二本柱の一本に当たる高血圧と、それに伴って起こる合併症についてお話しします。高血圧によって起こる怖い病気の代表は、心筋梗塞や脳卒中です。脳卒中とは脳の血管が切れる脳出血と脳の血管が詰まる脳梗塞を併せて言います。脳卒中の原因として一部の先天性の血管異常や不整脈が関わった場合を除くと多くは生活習慣病、特に高血圧が最大の危険因子となります。

血圧とは

血圧とは、血液が血管の中を流れるときに生じる圧力を数値で表したものです。血液を全身の血管に送り出す役目は心臓が担っています。心臓は、収縮と拡張を繰り返しており、心臓収縮時の血圧値(最高血圧)と心臓拡張時の血圧値(最低血圧)が目安となります。

高血圧の定義

通常使われている最高血圧140mmHg未満、最低血圧90未満という数値は通常診察室での測定結果で、ご自宅で測るよりどなたでも多少高めにでるものです。

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家庭での血圧は今現在の最新のガイドラインであるJSH2004(国際血圧学会)では高血圧を最高血圧が135mmHg以上、最低血圧が85mmHg以上のどちらかを満たせば高血圧であるとしています。また正常は最高血圧が120mmHg未満、最低血圧が80mmHg未満の両方を満たした場合を正常、その中間を正常高値ということになります。

高血圧の原因

血管の抵抗性、動脈硬化

加齢に伴って血管が弾力性を失ったり、動脈硬化によって血管の内壁が狭くなったりして、血液がスムーズに流れず血管に抵抗性が生じて慢性的に血圧があがります。

循環血液量、食塩の過剰摂取

食塩をとりすぎると、血液中にナトリウムが増加します。それを薄めようと、血液中に水分が流動し、全体の血液量が増えます。その結果、血圧も高くなります。また、血液中のナトリウムは血壁を収縮させる作用があるため、さらに血圧は上昇します。

肥満、中性脂肪や内蔵脂肪

脂肪が増え体重が増えると、全身により多くの血液を送り出すことが必要になります。そのため、血管壁の負荷が増加して、血圧が慢性的に高くなる状態を引き起こします。

心拍出量の増加

自律神経のうち、からだを活動状態に導く交感神経が活発になると、心拍質量が増えて血圧は上昇します。喫煙、寒さ、ストレス、感情の起伏などは、交感神経が過剰にはたらき血圧を上昇させます。

高血圧の予防

高血圧の予防には日本人の場合食生活が最も関わっており、特に塩分(塩化ナトリウム)制限が重要です。1日の平均塩分は1976年に13.6gとピークを示し、その後一時低下するもののインスタント食品やファーストフードの影響で再び上昇、以後健康ブームで再び低下し2002年には11.4gとなっていますがまだまだ高く、世界的に言えば6g以下にせよと言うのが原則になっています。

日本の食生活には漬け物、汁物などが欠かせませんが、みそ汁一杯に約3グラムの食塩が含まれているので飲むにしても1日1杯にしましょう。また野菜・果物は十分に摂っていただきカリウムやマグネシウムを補充しナトリウムの排出を促したり、ビタミンAやCにより体内の酸化を防いだり、食物繊維の摂取自体も重要となります。

アルコールは少量であれば血行改善に良いと言われていますがそれ以上の摂取は慎みましょう。少量のアルコールとは日本酒なら1合、ウィスキーならダブル水割り1杯、ビールなら中瓶1本程度となります。

また喫煙もニコチンの影響で血圧を上昇させ、禁煙で約10mmHg下がるというデータもあります。またこれは高脂血症と同じで週2〜3回のウオーキングに代表される有酸素運動も血圧を低下させます。

一般日常生活の中で急激な血圧上昇による脳卒中発症を予防する意味で、休養・睡眠を十分にとり早めのストレス解消、ぬるめの入浴や脱衣室と浴室の温度差への配慮、トイレを暖かく保って便秘を無くすこと、外出時には室内外の温度差を考えた防寒対策などすぐにでも出来る事ですので参考にしてください。

深刻な合併症

高血圧によって引き起こされる重大な病気

高血圧は、脳卒中、心筋梗塞、狭心症、腎機能障害と、いずれも深刻な合併症を引き起こす場合があります。中でも脳卒中は、死亡率も高く、かつては死亡原因の2位となっていました。

高血圧によって、血管壁がもろくなり破れやすくなたり、動脈硬化が進み血管が詰まりやすくなります。それに伴い、脳内の血管が破れる脳出血、脳内の血管が根詰まりを起こす脳梗塞を起こす確率が高くなります。

血圧が最高血圧(上の血圧)140mmHg以上、最低血圧(下の血圧)90mmHg以上で脳卒中の発生はうなぎ登りで、逆に最低血圧を5〜6mmHg下げるだけで4割以上発生が低下する言われています。

しかし、実際に高血圧症の方で、治療によって血圧のコントロールを十分に行えている方は、高血圧患者の1/4というデータもあります。医療機関を受診し、高血圧の予防と治療をしっかりと行って下さい。下記に家庭で血圧を計る際の注意点を列記しましたので参考にして下さい。

家庭で行う血圧測定法

1. どのような機械(器具)で測ればよいですか?

一般に市販されている血圧測定器には、指、手首などのものがありますが腕(二の腕、上腕)に巻くタイプ、お医者や看護婦さんが診療所で測るときに腕に巻いて血圧を測るものに似たものが良いです。腕の先端に行けば行くほど誤差が大きくなります。腕に巻く布製のものをマンシェットと言いますが、これが心臓の高さに来るような位置で測るのが良いです。測定した血圧は記録に残すようにしましょう。自分の血圧の理解、また内服治療をされている方は診察時にお持ちになれば、主治医サイドとしてもとても良い参考になります。

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2. いつ血圧を測るのが良いですか?

血圧は寝ている間は低目に保たれ起きたときに、車のエンジンで言う暖気運転に入る時の様にググーッとあがります。不幸にも心筋梗塞や脳卒中で倒れた方の話を聞くと圧倒的にこの朝起きたときや早朝が多いと思います。この朝の血圧が上がる時をいかにコントロールするかが我々医者の腕の見せ所となるわけです。ですから血圧を測るとすればこの一番高くなる可能性のある起床後一時間位に測るのが良いです。また1日に2回測るとすれば就寝前に座位で3分程度の安静後に測りましょう。

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3. 1回の測定時に何回測ればよいですか?測定毎にばらつきがありますが、どのデータを取ればよいのでしょうか。

一回目に測った血圧に納得すればこれをその日の血圧と考えて良いと思います。もし一回目の血圧に納得できない場合、一回目の血圧は忘れて二回三回と後二回は測って頂いてこの二回の平均をその日の血圧と考えましょう。ただし一回目の血圧も一応記録には残しましょう。

4. 測定時に何か注意することはありますか?

血圧を測るときは3分位安静にしてから行います。測定のポイントは先にお話ししたように時間で血圧は変わりますので同じ時間、かかるストレスを同じにする意味で同じ姿勢(座位)、同じ場所で測りましょう。時間は出来れば起床後一時間以内、排尿後、朝食前に測定しましょう。血圧の内服治療をされている方は内服前がよろしいでしょう。

5. 最大値と最小値は、何を表していますか?

最大(=最高)血圧は心臓がグ〜ッと縮んで血液を血管(動脈)の中に押し出したときに動脈の壁にかかる圧で、最小(最低)血圧は心臓がパ〜ッと広がり静脈から血液を心臓に戻った時の動脈にかかる圧です。

6. 家庭で測った場合、いくつを正常値とすれば良いですか?

通常使われている最高血圧140mmHg未満、最低血圧90未満というのは通常診察室での測定結果で、ご自宅で測るよりどなたでも多少高めにでるものです。家庭での血圧は今現在の最新のガイドラインであるJSH2004(国際血圧学会)では高血圧を最高血圧が135mmHg以上、最低血圧が85mmHg以上のどちらかを満たせば高血圧であるとしています。また正常は最高血圧が120mmHg未満、最低血圧が80mmHg未満の両方を満たした場合を正常、その中間を正常高値ということになります。

7. 正常値に男女差、年齢差はありますか?

まず男女差はありません。年齢差ですが以前は「自分の年齢+いくつ」などと言われていた時代もありましたが、年齢差は無いという方向に血圧の診断基準は動きつつあります。

欧米でも日本でも診断基準に年齢差はありません。治療目標値にも欧米では年齢差はありませんが現在の日本では年齢別の血圧の目標値を2段階にして高齢者を75才以上として、それ以下の年齢に分けて目標値を決めています。

8. 数値が実際よりも高く出てしまう外的要因などはありますか?

すでにお話ししたように一日の中でも血圧は変化します。それ以外にでも暑さ・寒さ、緊張(診療では多少高くなったり、白衣高血圧といって医者を見るだけで20〜30mmHg血圧が上がる場合も)などで上がります。ですから測定の条件を一定にするよう心がける必要があります。

9. 検査結果は、どのように管理・記録したら宜しいですか?

表を作って記録に残すようにしましょう。ただ連れずれなるままに残すのではなく、決まった条件で残すようにしましょう。ただし日中や夜間でも何か体に異変を感じたときは測って記録に残すのは後の診療で参考になります。異常事態はこの条件とは別です。

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